スローモーションのような動きだった・・・
が、一歩でも付いて行こうと、息も絶え絶えに、動かない足を運んだ。
一歩進んでも、竿は伸されたまま…。それでも、もう一歩・・・。
もう、魚を見る余裕はなかった。 「止まってくれ〜」 心底願った。
2度、3度と首振りを直に感じ、糸切れの覚悟を何度もした。
が…遂に竿のテンションが抜けた。 ん? 止まってる!? 助かった!!!
徐々に竿を立てながら、転ばぬように並び、岩の上に座り込んだ。
息は完全に上がり、足はもう…1歩も動かなかった。
1分以上…激しい深呼吸を続け、座り込んだまま魚の動きを見ていた。
【後書き】 途中経過を敢えて素直に、詳しく書きました。 今回対峙した特別な桜鱒に敬意を表して…。
と、同時に、この釣りが長くは続けられない予感をもって…。 特に【当りの微妙な感覚】を解っていただける方の為に書きました。
参考になれば幸いです。(拝)
白梅
僅かな緩流で止まった。 やっと追いついた。
と、思う間もなく、また奔流に走り、下る。
水際の川岸を付いて行こうとするが…
行く手を棘が、枯倒木が、崩れる石積みが、邪魔をする。
奔流に入ったサクラは、どんどん離れて…。
遂に、竿が伸され…ほぼ竿と糸が一直線になった。
息は上がり、足も動かなくなってきた。
まともにサクラの首振りが伝わって来る。 これまでか…
ん? 根掛り? まさか…これで??
紅梅
竿を一瞬 見上げた…違う!! 乗ってる。
水面下でギラッと白く光る。サクラの首振りが重い。強い。
白泡立つ奔流に乗って、障害物の向こう側に走った。
竿を立てて障害物をかわしながら、川に飛び込み、走る。
が…足がついてこない。股下水深では 水の抵抗が辛い。
転びそうになるのを堪えるのが精一杯だった。
名前知らない…
1人生えの花
「グ」でもなく、「ク」でもない。
ましてや「グン」や「クン」ではない。
勿論「ゴン」でも「コン」でも「コツ」でもない。
目印に出る当りではなく、竿を持つ手に直接感じるもの。
糸を通じ、竿を通じて伝わる、流れの重さ的な感覚。
敢えて言うなら、「グ」と「ク」の中間の感じ…。
時間にすれば、0.2秒程か…。
重さの違和感に…
思い切り跳ね上げた竿が止まった。
【老体の限界を体感した】
ボケ
椿 or
山茶花
ここまで来れば…気持ちと体力に余裕が出てきた。 さあ、こちらの番だ。
立ち上がり、プレッシャーをかける。 相手は、まだまだ元気が有る。
対岸の流芯に潜り込む。 引き出す。 潜り込む。
取込み場所を模索しつつ、足場のいいところまで、テンション掛けながら下った。
後は…気持ちよく青竿を曲げるだけだった。 改良したタモにもすんなり入った。
5分程経っただろうか…